障がいを持っていてもいなくても。「働く」をもっと楽しくする仕事づくりの極意とは?
すべての社員が働きがいを持って笑顔で働くために
「楽しく、安心して働ける、人に優しい職場(コミュニティー)を」
こんにちは。ナツママです。
「楽しく、安心して働ける、人に優しい職場(コミュニティー)を」 - これは当社の『行動理念』の一節です。
多様な人材を受け入れ、すべての従業員が『楽しく』『安心して』働ける環境を作ることを、当社の社会的責任であると考えています。
これを具現化するため、一昨年から、この理念に賛同いただける企業様とタッグを組んで、さまざまなチャレンジを始めています。
以下に一例をあげますと、
2018年11月 久遠チョコレートとチョコレート工場をオープンした他、2018年8月 胡蝶蘭栽培に参画、2019年2月 ミカフェートとともに障がい者運営によるプレミアムカフェオープン、2019年5月「わーくはぴねす農園」オープンなど、いずれも障がいを持った当社社員が運営する、というものです。
「品質が高いものを作り、提供することを通じて、社内にさまざまなコミュニケーションが生まれること」を期待しています。
実際、久遠チョコレートでは、当社社員が作るチョコレートを全国の百貨店などで販売し、その高い品質を評価いただいています。胡蝶蘭も一般の市場で販売されています。
今回紹介するのは、札幌にオープンした社内カフェの取り組みです。
そこには、個性に寄り添い、一歩ずつ成長するカフェのスタッフと、それをサポートする店長の、細やかでひたむきな努力がありました。
障がい者運営の社内カフェ2店舗。ワゴン販売も開始
「障がいを持った社員が本当においしいコーヒーを淹れて、社員やお客様に提供するカフェを作る」
このチャレンジは、2019年、東京は勝どきの本社ビルの受付に、社員と来客者専用の社内カフェをオープンし、2019年の9月には札幌に2店舗目をオープン。いずれもオープンの際には、多数のメディアにお越しいただき、報道していただきました。
特徴は3つ。
- 障がいを持った社員が運営する
- 提供するコーヒーは、ミカフェート※がプロデュースした当社カフェ向けのオリジナルブレンド
- ミカフェートのバリスタから研修を受けたスタッフがコーヒーを淹れる
現在では、オフィスフロアでの社員向けのワゴン販売も開始。
毎日、朝昼2回、淹れたてのコーヒーを乗せたワゴンがフロアをまわり、オフィスにはコーヒーのいい香りが・・・。
会計とポイントカードへのスタンプもすべてカフェスタッフのみで行います。
最高においしいコーヒーをオフィスにいながら飲むことができる。
他のカフェには、正直行く気になりません。(他のカフェの皆さん、ごめんなさい)
現在は、要望の多かったモーニングコーヒー(8時半~)の販売を行ったり、他の拠点への拡大も視野に入れているとのこと。楽しみですね。
スタッフに聞いてみました。「カフェの仕事をやってよかったことはなに?」
カフェのスタッフにインタビューしてみました。回答してくれたのは、札幌カフェスタッフのお二人です。
接客があることです。
お仕事は今が初めてです。
仕事を始めるとき、不安なことはなかった?
接客のお仕事をしたことがなかったので不安でした。でもやってみたら、思っていたよりも上手にできるので不安は解消されました。
しっかりコーヒーを淹れることができるか、お客様としっかり接することができるか不安でした。今も少し不安に思うこともありますが、やってみると解消されてきて、毎日頑張りたいと思っています。
もっと頑張りたいことはある?
お会計をするときの機械、特にサピカ(札幌の交通系電子マネー)の新しい機械の操作をもっとできるように頑張りたい。
お客様との接し方を工夫して、もっと頑張りたいです。
それと、コーヒーを淹れる工程などのスキルを一定に保てるようになりたい。
相談できる人はいる?
います。管理者のお二人です。
カフェのお仕事をやって良かったと思うときはどんなとき?
従業員の皆さんから「おいしい」とお声をかけてもらえたときと、常連のお客様が増えてきたことです。
高校生の頃から、やってみたいと興味があったので、夢がかなって嬉しいです。
以前は、一つのところにとどまらず、色々なお仕事を経験してみたいと思っていたのですが、今はとても楽しいのでカフェの仕事を続けたいです。
「働く」をもっと楽しくするために、店長が心がけていることとは?
スタッフの皆さんをサポートし、笑顔を一緒に作ってくれている店長は普段どのようなことに気を付けているのか?。答えてくれたのは、札幌店店長シバタさん、ワタナベさん。本社店長のアビコさんの3人です。
カフェ運営で苦労していることはありますか?
集客を増やしていかにリピーターとなっていただけるか考えて、対応することですね。
大変な仕事なのは間違いないですが、特に苦労したという感覚はありません。
特にないですね。メンバーみんながお互いの苦手なところを助け合ったり、明日の作戦を立てたり楽しく仕事をしています。ただ、まだまだ私たちのことを知らない方がたくさんいらっしゃると思います。今後カフェを色々な拠点に広げていくにあたり、どうすれば喜んでいただけるか、私たちを知っていただけるかを考えるのが難しいですね。コーヒーを飲んでいただいて終わり、にはしたくないと思います。次につなげる何かを考えるのも難しいところです。
スタッフごとに配慮している点はありますか?
一人ひとりの個性を考えることと、苦手を克服した時の笑顔を大切にすることです。得意をより一層、成長へ繋げられるように考えて接することですね。
このスタッフはこういった特徴で、こういう性格であるということを知ったうえで、個々に寄り添った対応を心がけています。
そうですね、たくさんあるんですが、まずは、「やりたい!」「やってみたい!」という気持ちを大事にしてあげることですね。今後のメンバーの可能性を広げるため、それぞれの気持ちを大切にしています。
また、不安に思っていないか、機嫌が悪くないか、などの微妙な変化にすぐに気づくことができるように、いつも意識していますね。思っていることを上手に言い出せないメンバーもいるので、普段からよく見て、すぐに気がつけるようにしています。あとは何でも言えるようなアットホームな雰囲気づくりを心がけています。
そして、「失敗した」と思ってしまわないように、フォローしてあげることも大事ですね。例えば、挽く豆のグラムを間違ったとしても、こちらで必要な分量を調整してあげればいいですし、見方を変えれば失敗じゃないでしょ?ということを伝えています。ほんとにみんな真面目なので、失敗したと思ったら落ち込んで引きずっちゃうので。
仕事のアレンジで言うと、「これは自分の仕事」と思えるようにきちんと担当割りをして責任を持って完遂してもらえるようにしています。みんなが『自分の代わりはいない』と思えるような仕事にしたいです。
これから改善したいことは何ですか?
まずは売り上げの向上ですね。また、この取り組みをもっとご理解いただくことも必要だと思っています。
顔見知りの方だけではなく、初めての方にも親しみやすさをもってお声がけできるようにしていきたいです。
売上は大切ですよね。次にちょっと切り込んだ質問を。障がい者が運営するカフェの管理者として、大切にすべきことと課題は何だと思いますか?
障がいについての知識はもちろんですが、人としての心が大切だと思います。日常的に変化が伴うことでもあるため、一日、一瞬の出来事をしっかりと漏らさず、視野を広げることが今の課題です。
そうですね。カフェの運営ということで言えば、やはりコーヒーを淹れる技術がしっかりしていないといけないな、と思います。でも技術だけで管理者ができるわけではありません。最も重要と感じるのが、人としてのやさしい気持ち・やさしくできるか、ということだと思います。取り組むべき課題としては、どうやればスタッフだけで日々の運営ができるようになれるか、ということです。日常的な課題だと思います。
難しいですが、「障がい者」や「健常者」といった枠組みでとらえないことが大切かな。『障がい』ではなく、一人ひとりの個性として捉える。できないことに目を向けるのではなく、できていることを褒めて一緒に喜び、一緒に成長をすること。
もちろん、障がいや病気に関する知識はあったほうが良いと思います。その方が困っているときにサポートできたり、何か感じているけど言葉にできないことなどに気がつけるからです。
また、カフェだけではなく、今後のみんなの将来を考えることですね。ずっと今のままならいいですが、私も含め年齢を重ねていきますし、この先も困ることがないように、できることの幅を広げてあげることや、自信をもって取り組めることを一緒に探すのも私のやるべきことだと思っています。
素晴らしいですね。いつも繊細な気遣いと優しい心を忘れずに対応されている皆さんですが、ご自身のスキル不足などを感じることもあるのでしょうか?
人として未熟な部分に対してまだまだだな、と思います。例えば、日常の気分や疲れなどで、会話の質が変わってしまっているなど、自分自身に甘えがあると感じることもあります。
ああすればよかった、こうすればベターだったかもしれない、という小さな後悔は毎日発生しています。自分の気づかなさに情けなくなることもあります。でもそれを糧にスタッフと一緒になって、毎日業務を行っています。
思っていることを具体策に落とし込みたいときに、もっと勉強しなきゃ…と思います。
スキル不足を解消するために会社としてサポートできることはありますか?
どうしても一人では解決しない課題や、個人で受けることのできない、例えば講習会への参加などは、助けをいただきたいです。
社内外のコミュニケーションの幅を広げるときのサポートです。自分も周りの方にサポートしていただいて仕事ができています。だからこそ、自分が助けてもらった分以上に、メンバーやほかの方にお返ししなければ、と思います。そういった輪をどんどん巻き込んで広げていきたいです。
会社や周りの社員の方の理解があると感じますか?
関わる方はみなさん、理解があります。ただやはり、会社の取り組みを知っている方が多いのは、私がいるのが本社だからということもあると思います。障がい者が運営するカフェということを知らない方からすれば、「知らないから近づきにくい」となっていると思うので。そこは私たちが架け橋になれるようがんばります!
そして私たちのことも知っていただけたら嬉しいです。
社員の皆さんからもなんでもよいので一言でもお声がけいただければとても嬉しいです!みんな人見知りだったり、新しいことをするときにとても緊張したり、失敗するとシュン…としたりします。「おはよう」「おいしかったよ!」などお声がけいただけたら、とても励みになります!でもこれって、私もそうですし、きっと皆さんも一緒かと思います。
社員の皆さん、よろしくお願いいたします!笑
これからやってみたい新たな取り組みはありますか?
例えば地域コミュニティに参加して、主役であるスタッフの笑顔をたくさんの人に知ってほしいと思います。
別拠点でのコーヒーの販売や新カフェの設置をしてみたいです。
カフェだけではなく、船橋農園や久遠チョコレートの取り組みをすべてつなげて、新しいメニューを作りたいです!
本社カフェはオープンして約1年、札幌は約半年。
オープンから追いかけてきた中で、ナツママが驚いたことは、カフェができる前より、スタッフがどんどん笑顔になっていることです。楽しそうに、一生懸命に頑張っている彼らの様子を見ると、うれしくなりますし、パワーをもらいます。
ナツママは本社でほぼ毎日、コーヒーを購入するので、スタッフの皆さんとはすっかり顔なじみです。スタッフも、常連さんの好みや、電子決済の種類(PayPayなのかSuicaなのか)まで覚えてくれています。
カフェがオープンする前は、あいさつをする程度。でも今は、「今日寒いね」「今日アイス(コーヒー)ありますよ」「夏服に変わったの?」などなど会話をするようになりました。
以前は遠慮もあって、挨拶もできていなかったのですが、今ではスタッフの皆さん自ら、目を見て、大きな声で挨拶をしてくれるようになり、話もしてくれるようになりました。
カフェの仕事を通して、確かにお互いの距離が縮まったと感じています。
店長のアビコさんが大切にしている「『障がい』ではなく、一人ひとりの個性として捉え、できていることを褒めて一緒に喜び、一緒に成長をすること」という考え方。
この考えは、すべてに当てはまる考え方だと思います。
店長の皆さんと同じような視点で、ともに働く人と一緒に考え、一緒に成長する。そんな小さな輪を広げていこう、そう確信した取材となりました。
※(株)ミカフェート
新たなコーヒー豆を探し、世界中を飛び回ることから、「コーヒーハンター」と呼ばれる川島 良彰氏が創業。樹の選別から栽培、抽出に至る全ての工程に独自の品質基準を設け、グレード別に確かな品質のコーヒーを取り扱う。その高い品質から日本航空の機内、星野リゾートなどで提供されているほか、国内外のコーヒー愛好家から熱い支持を得ている。
以前の仕事と違いは?