できぬなら 作ってしまえ 親子ミュニケーション(字余り)
天才か抜けてるのかわからないコミュニケーション施策を考えた、あるお父さんの記録。
なかのおじさん、スミです。
ちょうど年男です。どうでもいい情報でしたね。
今日は、ある特殊な親子のコミュニケーションのお話をしようと思います。
コンタクトセンター事業を生業とする当社は、創業時から「対話」を大切にしています。家族という小さな集団における「対話」でも、同じことが言えると思います。
対話のために「あるもの」を作ったおじさんのお話です。
「なかのひと紹介」でもお伝えしているとおり、私は重度の聴覚障害を持っています。
電話をすることができない人が、電話代行で創業した会社にいる、不思議でしょ?
そして、おしゃべり好きな4歳児の父親でもあります。
4歳児といえば、言葉をどんどん覚え始め、いろんなことを報告しようとがんばったり、アレしたい、これヤダ、と主張したりする年頃。
残念ながら、そのほとんどをその場で私はわかってあげられません。
子もなんとなく父親が聞こえないことはわかっていて、呼んでも気づかないときは肩をたたいてきたり、伝わってないと感じたときは、妻がやるように手のひらに文字を書こうとしてきます。まだひらがなも書けないのに。
そんなときは申し訳ない気持ちと愛しい気持ちで抱きしめたくなります(ただの親バカです)。
どうやってコミュニケーションをとろう・・・真剣に悩みました。
ある日、同僚と海外旅行の話をしていて、「指さし会話帳」の単語が出たときに
これだ! と(ひらめいたのは同僚です)。
指差し会話帳とは、海外旅行の際に、現地の言葉がわからなくても、現地の人と該当するイラストを指し合って意思疎通を図る本です(最近はスマートフォンやタブレット用のアプリもあります)。
「指差し会話帳 」や「絵を見て話せるタビトモ会話 」などがあります。
「~したい」「~に行きたい」「~がほしい」だけはなんとなく行動でわかるので、その動詞につなげる「私と子どもの日常でよく使いそうな単語」をカードにし、子どもから伝えてもらおう。
そう、私はデザイナーだし、なければ創造してしまえばいいのだ!
さすが俺様!(ひらめいたのは同僚です)
そして、作ったのがこれです。
結果、これを使ってコミュニケーションができたかというと・・・
まったく完成しません!
なぜなら・・・
興味の対象や好みの変化など、我が子の急速な成長にカード作りが追いつかなかったから。
お父さんは忙しいんです。無料素材も活用して手間を減らしたのにもかかわらず、未完のまま、もう少しでお役御免になりそうです。なぜって・・・ひらがなを書き始めていますから。
理想ではこうなるはずでした。
100円ショップで買える、薄くて磁力も弱めのマグネットシートを片面に貼ることで、力の弱い幼児でも取ったり戻したりが気持ちよくできるようにしました。
カタカナにもちゃんとひらがなをふる気遣いをする俺様、ステキ!
幼児にとって手の届かない冷蔵庫の上段にあるデザートや飲み物も、カードを使って伝えることができます。
(それも今ではもう、イスを持ってきて自分で冷蔵庫から取れる・・・)
後日に知ったのですが、実はこれ、自閉症などのコミュニケーション障害を持つ人のためのPECS(Picture Exchange Communication System)というれっきとしたコミュニケーションシステムとして確立しているようです。
そんなものを知らずに考えついたなんて、
さすが、俺様!
(何度も言いますが、ひらめいたのは同僚です。そして未完です)
さらっと調べてみると、絵カードを作成する上での注意点もいくつか気づかせてもらいました。
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伝えたいイラストに、余分な情報(ノイズ)を入れない
例)「寝る」というイラスト:布団で寝ている男の子に、吹き出しで夢を見ている情報を入れると、「寝る」ではなく「夢」に着目してしまう。
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1つのカードに、複数の意味を持たせない
例)「ハサミ」のイラスト:ハサミ単体でなく、ハサミを持って紙を切っている様子をイラストにすると、「はさみ」と「工作」のどちらを表すのかわからなくなる。
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カードのイラストは、実物と色や形態を合わせる
例)「帽子」のイラスト:実際に使っているのは青い野球帽なのに、イラストの麦わら帽子は違うものと認識し、いつも使っている帽子を出してほしくても選べない。
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「時間」と「単語」など複数の組み合わせをさせる
例)「テレビ」+「30分」:テレビを30分だけ見る、など、自分で約束事を作らせて、自己管理を身につけさせる。
こういうことも学んで改良していったというのに、未完・・・無念です。
聴覚障害を持ちながら、私(と同僚)はこうして新しい対話手法を創造しました。(本当は既に存在したんですが)
ベルシステム24は、コンタクトセンター業務に括らず、新しいコミュニケーション手法を模索したり、新たに創ったりして、クライアントや消費者の課題を解決する会社。私の場合は、デザインを通して実践しています。電話のイメージからかけ離れた聴覚障害者である私。むしろ聴覚障害を持っているからこそ、コミュニケーションについて普段から深く考え、現在の業務に役立てることができている。そんな風に思います。
タイトル「できぬなら 作ってしまえ 親子ミュニケーション(字余り)」なのに・・・字余りどころか、カードの残骸だけが余るという結果になりました。が、コミュニケーションについて考える良い機会になりました。これを読んでいるあなたと新しいコミュニケーション手法を創造してみたい。そして私の手柄にしたい。