『障がい者の所得向上』を目指すラン育成施設で働く、当社社員を訪ねました
国内唯一。障がい者がランを育てる AlonAlon × ベルシステム24
千葉県富津市に、障がい者が観賞・販売用の胡蝶蘭を育成する『AlonAlon オーキッドガーデン』という就労支援施設があります。当社は、このAlonAlonの取り組みに賛同し、障がいのある当社の社員が勤務しています。
「Alon Alon」とは、バリの言葉で「ゆっくりゆっくり」の意味。
焦らずゆっくりと一つずつ、障がいのある人もその親族も尊厳を守れる施設づくりを進めていきたい、という理念が込められています。
AlonAlon理事長の那部さんは、ご自身も知的障がいを持つ子どもの親です。親として「障がいがあっても健常者と同じように働く喜びを知ってほしい。そして健常者と同じように自立して、人生を歩んでいってほしい」 - その想いから「どうしたら障がいのある人たちが収入を得ることができるか、そして所得を増やせるのか」を考えるようになりました。そして、過去の会社経営で培った経験を活かし、最終的に胡蝶蘭の育成・販売にたどり着いたそうです。
そうして成り立ったAlonAlonの取り組みや働いている人たちのことをもっと知りたいと思い、現場を訪ねました。
日本で唯一。障がい者がランを育てる支援施設AlonAlon オーキッドガーデンとは?
「AlonAlon オーキッドガーデン」は、取り組みに賛同した企業がスタッフを社員として雇用し、ランの栽培と販売をする、ラン栽培農場です。
施設は「就労継続支援B型」事業所として登録されています。障がいのある方に、社会に出るためのスキルを学んでもらう就業支援施設であり、社会に送り出せる人材に成長した後は、企業に就職してラン栽培に携わることができる施設でもあります。所属するスタッフは企業雇用に移ることができるように、「AlonAlon オーキッドガーデン」との雇用契約は結んでいません。
国内において現在、障がい者に作業の対価として支払われる月額工賃の平均は、約1万5千円。障がい者年金を足しても、生活保護の受給額にも満たない額です。(AlonAlonパンフレットより)
「AlonAlon」が他の施設と大きく違うのは、栽培するランの品質と、スタッフに支払う工賃の高さです。目指すのは「障がい者の経済的自立」。それをかなえるため、一般に流通しているものと同等の高品質なランを育成しています。そして、この取り組みに賛同する企業や個人への販売ルートも開拓、ランの流通の仕組みを確立し、月額工賃10万円を実現しています。企業に雇用されているスタッフは社員としての給料が支払われるため、より安定した経済的自立を実現しやすくなります。
ラン育成の工程は細分化されていて、スタッフは実力に合った作業を担当しています。
施設では最新の管理システムを導入しているため、農業は休みなし、というイメージとは違い、土日や年末年始はお休み。管理工数を節約することでスタッフにも無理をさせることなく、一人ひとりに寄り添いながら、一緒に成長するための時間を確保しています。
企業採用で働いているスタッフを「パートナー」、勉強に来ている通常の施設に通っているスタッフを「メンバー」と呼んでいます。パートナーの就業時間は9時から17時半、メンバーは9時半から15時半まで。メンバーは生活スキルを学びながら、ここで仕事ができるようになるために日々勉強しています。訓練を積んで、一定のレベルをクリアできたメンバーは、「パートナー」として就職ができるように支援しています。
AlonAlonで働く当社社員に聞いてみました。将来の目標は何ですか?
この日、ちょうど仕事を終えたパートナーで当社社員の横山さんにも突撃インタビューをしました。横山さんは今、出荷前の花に袋をかけてテープで留める、「スリーブかけ」という作業を担当しています。実は横山さんは、若い時には音楽バンドやっていたり、探偵事務所に勤めたこともあるそうです。
Q.この仕事をしていて楽しいことは何ですか?
Q.趣味は何ですか?
Q.将来の目標はありますか?
素敵な笑顔で、将来の夢を語ってくれた横山さん。その口調には力強さを感じました。
障がい者の自立について、どう考えていますか?関係者にインタビュー
今回、「AlonAlon オーキッドガーデン」の施設長 渡邊さんと、ベルシステム24の特定子会社で、障がい者事業を行っている(株)ベル・ソレイユの下村さんにもインタビューしました。
B型事業所は本来職業訓練的なところで、月に1、2万円しか稼げないのが通常です。それでは生活できません。でも、ここはB型事業所でありながら事業所からの給与が月10万円近くと実績がありますし、企業雇用の方は社員としての給与が出ますので、より自立がしやすくなります。この新しい試みに、当社も賛同したんです。
そもそも渡邊さんが障がい者と関わり始めたきっかけは、どんなものだったんですか。
小学生の頃に同級生の家に遊びに行った時、脳性まひの妹さんがいました。一緒に遊ぶときに、会話はできないけれども、目と目が合って笑ったり、コミュニケーションを図れたのがすごく印象に残っていて、いろんな人がいるんだなっていうことをそのときに思って、(障がい者に対して)特別な感じではない印象で育ってきました。
小さいころから日常的だったんですね。施設のスタッフさんと仕事をするうえで、配慮していること、気を付けていることはありますか。
私自身は、「障がい者」という括りでは考えていないというか、接していないですね。1人の人間として、って思っています。もちろん配慮はしますけれども、その人の性格などによって接し方が少し違うくらいで。なので、そんなに配慮してないかもしれないです。(笑)
下村さんは、施設や施設で働いている方を見て、どのように感じましたか。
一般的に、障がいのある方は、コミュニケーションが苦手な人も多いですが、施設長をはじめ、独り立ちしてほしいと、周りの人たちがいろいろ話しかけて、それに彼らも応えようと一生懸命に仕事をしていて、楽しんでいる、と感じました。
渡邉さんがこの仕事をしていてよかったな、と思う瞬間はどんなときですか。
やはりみんなが真剣に仕事に取り組んでいる様子が見られるときと、笑顔で「楽しい」と言って、通ってきてくれてるときがすごくうれしいです。
みんなで喜び合った、楽しかったエピソードはありますか。
最初は苗から仕入れて、いろんな作業工程を経て、やっと花が咲き、鉢に入れて出荷の準備ができて、ついに初めての出荷を迎え、トラックに積み込んで見送った時は、すごく歓喜しましたね。他のスタッフも「嫁に出すような気持ちだ」って言って。
その想いは、毎回、出荷の時に感じてますね。(嫁ぎ先で)みんなに幸せを届けてねって言って送り出しています。
障がいがあっても他の人に受け入れてもらえるように自らも努力するのが「自立」(渡邉)
「障がい者の自立」についてどうなるとよいと考えていますか。
施設で働く方たちには、「障がいがあるから受け入れてもらえない」という考えではなく、自分の持っている障がいが他の人に受け入れてもらえるように、自分でも努力しながら、生活できるようになってほしいと思っています。
たとえば、身ぎれいにしましょうとか、公共の場で大きな声をあげない、などもそうです。我慢する練習を、彼ら自身にもしてもらいたい。
周りのサポートもあるけれども、障がい者自身も甘えないで、がんばってもらえるようにしていくのが「自立」ではないか、と思いますね。
障がいを言い訳にせず、自信を持って社会に出てほしいですね。
そうですね。それと、健常者である私たちの方も、たとえば、障がいのある方と働くときに、警戒してしまったり、どうしていいかわからない、とならないように、普段から、できるだけいろんな背景を持つ人と関わっていくべきですよね。それで「みんな違うけど、一緒にいるんだな。それぞれの個性として認め合おう。」と理解する人が多くなるといいな、と思います。
施設やスタッフのこれから
施設や働いている皆さんが、将来こうなったらいいな、という目標はありますか。
イキイキした生活をできるということと、生活のための仕事ではなくて、こうなりたい、こうしたいという目標を見出してもらって、そのために働いてほしいですね。
雇用主の企業の立場として、下村さんはいかがでしょうか。
せっかくこうした形で携わった以上、継続して雇用することが大事かな、と思います。我々は企業として業績を上げなければならないのも事実ですが、採算を考えながら雇用を継続することをまず第一に考えていますね。当社も、お祝いなどで胡蝶蘭を購入することがあるので、施設で育てたランを使ってもらいたいと思っています。
最後に、渡邉さん、ジモタツを読んでいる皆さんにメッセージをお願いします。
農家さんでも一生懸命に育ててると思いますが、ここも負けずに、思いを込めて一生懸命に作ってます。ランを送りだすときも愛を込めて送り出しているので、必ず幸せを運ぶ花となってくれるはずです。ぜひAlonAlonの胡蝶蘭をお使いください。
AlonAlon胡蝶蘭購入はこちらからお求めいただけます。
いかがでしたか?
当社は、北海道は下川町にて、障がい者や地域住民とともにチョコレート製造事業を来年の4月より予定しているほか、池袋のセンターでは、まだ日本語が拙い外国人の採用・教育を行い、当社で働くためのスキルを身につけることができるトレーニングセンター「SUDAchi」を開設するなど、多様な人材に活躍の機会を提供しています。
昨今、障がい者の雇用率の話題が尽きませんが、当社は、障がい者に限らずに「多様性を受け入れ、さまざまな人に対して、それぞれができることを提供しよう」という取り組みをしていると感じており、社員としてとても誇りに思っています。現場に足を運び、多くのこうした取り組みを紹介できたらいい、そんなことを思いました。
(おまけ)聴覚障がい者がインタビュー?その仕組み
さて、皆さん、聴覚障がいのある私がどのようにインタビューをしたか、気になっているのではないでしょうか。
当社には、私の他にも聴覚障がい者の社員が各拠点で働いています。私が所属する部門はミーティングが多いため、いかに早く、正しい内容を共有するか、検証を重ねています。今回利用した仕組みは次の通りです。
音声認識共有アプリ「UDトーク」を使いました。
こんな感じで受け答えをしました。技術の進化ってすばらしいですね。
AlonAlonの『障がい者の自立』に対する考え方には感銘を受けました。私自身も障がいがあることで、家族から「将来自立できるのか」と心配してもらった身です。そんな私も就職し、結婚もして、親となった今では、子どもの自立を心配する立場になりました。今日はぜひ、「障がい者の自立」をテーマにお二人にお話を伺いたいと思います。