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障がいがあるバリスタたちの挑戦

コーヒーが紡ぐ、奏でる。小さなハーモニーの中に見つけた、ダイバーシティのカタチ

初めての競技会出場で何を得たのか

スミ

こんにちは、なかのひと、スミです。
2022年10月13日、品川プリンスホテルにて、全国各地にある障がい者が運営するカフェに勤めるバリスタたちが技術を競い合う『第2回 CHALLENGE COFFEE BARISTA 2022』大会が開催され、ベルシステム24(以下、当社)本社のカフェで働くスタッフたちも挑戦しました。

2019年2月より当社は、(株)ミカフェートのプロデュースのもと、障がいがある社員がバリスタとなってオリジナルコーヒーを提供するカフェを、本社オフィス内にオープン。

その後、札幌2店舗、沖縄北谷町・福岡博多の拠点内の休憩室にもカフェを開設。ベルシステム24グループの特定子会社である(株)ベル・ソレイユ(以下、ソレイユ)に所属する社員が、社員や来社されるお客さまに、毎日おいしいコーヒーを提供しています。
最近は、カフェがないオフィスへの出張販売サービスも開始し、オリジナルブレンドのドリップバッグも社員が購入できるようになりました。

ベルシステム24、SDGs並びに「多様性プロジェクト」を推進、「障がい者の運営によるカフェ」をミカフェートのプロデュースによりオフィス内に開設
https://www.bell24.co.jp/ja/news/holdings/20190207/

「おいしいから飲みたい」と思う高品質のコーヒーを提供する、プレミアムカフェの挑戦
https://www.jimotatsu.com/Bell24/cafe-open.html

カフェは社員同士の自然な会話が生まれる憩いの場になっている

『CHALLENGE COFFEE BARISTA』は、日本サスティナブルコーヒー協会が主催する、障がいがあるバリスタたちの競技会。2年ぶりのリアル開催に、当社はメインスポンサーとして協賛。加えて、本社カフェのスタッフも競技者として出場しました。目指すはグランプリ!
競技を通して、メンバーは何を感じ、得たのか?当社ブレンド名、「ハーモニーブレンド」に込められた想いとは?イベント密着レポートをお送りします。

審査は忖度なし。本当においしいコーヒーと感じたチームを評価

各チーム、練習の成果を見せる

審査は『ブレンド審査』と『抽出技術審査』の2部構成。

① ブレンド審査

チーム名を伏せられて、A~Kまでのアルファベット1字で示された11台のコーヒーサーバーが置かれた会場で、審査員や競技者、観客も含めた来場者がコーヒーを試飲。そして、一番おいしいと思ったコーヒーのアルファベットを1つだけ、紙に書いて投票します。
(前日に当社のコーヒーを試飲しておけば、当てて投票できたかも・・・)
なんて思いましたが、そこは忖度なし。自分が好きな風味だと感じたコーヒーに、スミも一票入れました。

ブレンド審査の会場。関係者は誰でも投票可能
競技に参加するメンバーも試飲して投票

大会で使う豆や器具は全チーム同じものを提供されますが、協会指定の3種類の豆の割合が各チームで異なります。酸味や苦み・渋み、濃さ、香り。スモーキーだったり花や果物のようだったり・・・とさまざまで、こんなにも変わるのか、と気づかされました。

② 抽出技術審査

続いては、抽出技術審査。実演により、オリジナルブレンドの味・香り・温度、加えてお客さまへのコーヒー提供の所作までを審査します。

広い会場でずらっと並ぶ審査員を前に緊張の実演

各チーム、ブレンド名とプレゼンを発表します。当社チームのブレンド名は「ハーモニーブレンド」
メンバーはブレンド名にちなみ、それぞれで色の違うTシャツを着て出場しました。

多様性とハーモニーをイメージしたお揃いTシャツ。大会前リラックスした表情を見せる

制限時間は10分。時間内に、豆を挽く、コーヒーを抽出する、適温適量で4人分のカップに注ぐ、4人の審査員に提供する、という作業を行います。大会場でカメラも入り、会場には緊迫した空気が流れていましたが、どのチームも本当に素晴らしいパフォーマンスを見せてくれました。

当社チーム実技の様子。温度なども厳しく審査される
当社チーム実技の様子。温度なども厳しく審査される
当社チーム実技の様子。温度なども厳しく審査される

果たして結果は?

結果発表を待つ関係者。緊張の瞬間

全チームの実演が終わり、審査結果が発表されました。グランプリの発表の前に、協賛企業賞、ゲスト審査員賞など順番に発表されていきます。ドキドキします。
当社チーム「Café de Bell」は、競技で使う3種類の豆の生産地の1つ、タイ北部ドイ トゥンでのコーヒー栽培に携わっている、メーファールアン財団代表のDiskul殿下がプレゼンターを務める「スマイル賞」を頂きました!

おめでとうございます!

スマイル賞受賞!おめでとうございます!

各賞の発表のあと、ついに目指すグランプリの発表です。結果は…
惜しくも、呼ばれませんでした。
長い戦いが終わり、今夜はゆっくり休んでほしいと思いながら1日が終わりました。

初出場で得たものとは?店長インタビュー

息もぴったり。本社カフェのメンバー
スミ

大会、お疲れさまでした。終わった後の皆さんの様子はどうでしたか?

アビコ

大会直後は、緊張して思う通りにできなかったからか、悔しさを覗かせていましたが、「次はカレーが欲しいから頑張る!」と前向きになっていて安心しました。

スミ

カレー!?

アビコ

企業賞の1つ「JAL賞」の景品が国際線ファーストクラス機内食のカレー25食だったんです。その賞が欲しかったようです(笑)。たくさんの人に見られて緊張してしまうからもうやりたくない!と思ってしまうより、楽しかったからまたやりたい!と思ってもらえたこと、これが本当に良かった。

スミ

そうなんですね。惜しくも優勝は逃し、悔しい想いもされたと思いますが、皆さん前向きですね。

アビコ

はい。みんな負けず嫌いで、目標があって前向きですごいですよ。「グランプリのチームと何が違ったんだろう」など話し合ったりして、さっそく研究を再開したんです。大会に出て、自信を持てたこともうれしい収穫ですね。

スミ

結構前から対策をしていましたよね?

アビコ

はい、大会の6か月前の4月ごろから準備を始めました。勉強のために前年の大会の動画を改めて見直し、出場チームのプレゼンテーション内容もチェック。そして、4月に大会用の豆や器具が届いたら、すぐに昨年の入賞チームのブレンドを実際に作って試飲してみたりして、研究を重ねました。

6か月間、研究や練習をしてきました
スミ

それはすごいですね。実際に大会で提供するブレンドの配合はいつ決まったんですか?

アビコ

いつもカフェを利用していただく社員の皆さまに試飲をお願いしたりして、提出期限のギリギリ前まで調整を続け、みんなで相談して決めました。悩みましたけど、それもいい経験になりましたし、楽しかったです。

スミ

当日は味や香りの審査だけでなく、お客様へコーヒーをサーブするまでの所作も審査項目に入っていましたよね。当日の役割はどのように決めたのですか?

アビコ

ハンドドリップ担当は、一番うまいとメンバーみんなが認めている人に最初から決まっていました。ほかの役割は、メンバーが普段からしている仕事内容と同じだったので、メンバーには「日々の仕事の積み重ねが大事」と伝えて、役割をローテーションしながら適性も見つつ、決めていきました。

普段カフェで行っている業務を大切に、役割は適性を見つつ決定した
スミ

日々のノウハウや積み重ねが、大会でも発揮されたんですね。そうやって適性も見ながら、練習を重ね、みんなで相談して作ったブレンドだったんですね。

「ハーモニーブレンド」の名前に込められた想いとは

当社チームのプレゼン内容

♬ハーモニーブレンド♬

普段私たちのカフェでは、お互いに助け合って仕事をしています。
一人ひとり得意なことや苦手なことがありますが、お互いが支えあって自分らしく楽しく働いています。今回ブレンドを行うにあたり、3種類の豆の個性を生かして私たちのチームを表現することをテーマとしました。

最初にしたことは、「自分はどんな味が好き」かを探すことから始めました。

色々なコーヒーを飲み、自分がどんな味が好きかはわかりましたがみんなそれぞれ好みが違うので、自分の意見を通すと他の人が苦手な味で飲めなくなってしまうということも知り、チームの「味」を作るのにも苦労しました。

最初に作ったブレンドはみんなが飲めるよう酸味や苦みが真ん中あたりの味になりましたが私たちの個性を表現できていませんでした。

そこから少しずつ調整をして、苦みはまろやかになるように、酸味は華やかさを添えて。
そこからやさしい甘さと、そして香ばしさで全体をふんわりと包み込む。
私たちのチームをブレンドで上手に表現できたと思います。

ブレンド作りは私たちに自分と、そしてチームと向き合うとても良い機会をくださいました。
みなさんに私たちのハーモニーが伝われば嬉しいです!

スミ

今回のブレンド名「ハーモニーブレンド」にはどんな想いが込められているんですか?

アビコ

3種類の豆の個性と、スタッフそれぞれの個性を掛けて、この4人ならではのハーモニーを奏でたい、と思って、「ハーモニーブレンド」という名前にしたんです。悩みに悩んで、最後は4人の個性を表す味と香りになったと思いますし、その過程でたくさん話をする中で、改めてカフェの仕事に向き合うきっかけにもなりました。

スミ

なるほど。何が自分たちらしいのかを模索して、たくさんの人達と一緒に作った味だったんですね。実技審査対策はどうしたんですか?普段の業務ではしない動作もありましたよね?

アビコ

はい。そういった動きは普段の業務の合間に、何度も練習しました。

普段の業務ではしない動作は、何度も練習
普段の業務ではしない動作は、何度も練習
スミ

本番は、メンバーがお互いを見守りながら、丁寧に丁寧に、こなしていましたね。
私も固唾をのんで見守っていましたが、会場に来られたご家族や社員も一心同体になっていたと思います。
終わったときは、泣きそうになりました。

アビコ

はい、私は泣いてましたね。(笑)

スミ

当日会場に行けなかった社員も、本社でのパブリック・ビューイングや、協会が配信したYoutubeのライブ映像を社内SNSでも流したりして、全社で注目していました。

本社ではパブリック・ビューイングも行われ、ほかのソレイユ社員も視聴した
社内SNSでも実況中継するなど、全社を挙げて応援
スミ

会場でも特製うちわを持って社長や関係者で応援しましたが・・・、目立ってましたね。(笑)

会場では社長も関係者もオリジナル応援うちわを持って応援
アビコ

(笑)はい。社長はじめ、全国の皆さんが応援してくださっていて、ありがたかったです。ソレイユには、カフェメンバー以外にも、オフィスの除菌・清掃や観葉植物の世話、文具等のリサイクルなどの業務をメインで対応している社員がいるのですが、当日はパブリック・ビューイングを真剣なまなざしで見てくれていて、一体感があったそうです。

スミ

パブリック・ビューイングで見ていたメンバーに聞いたら、「一生懸命だと思いました。」「上手だなと思いました。」「見ているこちらも緊張しました。がんばる姿に感動しました!」と言っていました。今回のチャレンジに刺激を受け、組織全体のモチベーションアップにもなったかもしれませんね。

アビコ

はい。自分たちにもたくさんの可能性があるのだ、と感じてもらえたらうれしいです。

スミ

最後に、今回の経験を、今後のカフェ運営にどう活かしていきたいですか?

アビコ

今回出場して、どのチームも日々『美味しいコーヒー』を作ることを目指しているのが、すごく伝わってきたんです。バリスタとしての姿勢やサービスもそれぞれの味があって、すごく勉強になりました。
反面、「いつも通りに」をチームのテーマとして参加した私たちの良いところもわかりました。今後は味はもちろんの事、コーヒーの提供までの時間とレジのスピードアップの向上、また、お客さまとの会話・丁寧なサービスにも力を入れたいです。スタッフとのコミュニケーションが楽しみで来ていただけるようなカフェにしていきたいですね。いつも身近にあることで、障がい者雇用が特別なことではない世界になったら良いなと思いますし、そうしたいです。そのために、毎日みんなと話し合い、少しずつ気づきを重ねながら、進んでいこうと思います。そして将来、カフェスタッフが一人前のバリスタとして「自分はどこに行っても大丈夫だ」という自信を持ってくれたら嬉しいです。

スミ

ありがとうございます。この挑戦は、たくさんの方に勇気を与えてくれたと思います。素晴らしい挑戦を見せてくれて、ありがとうございました。これからの活躍も楽しみにしています。


いかがでしたか?
グランプリ発表の瞬間、競技に参加した4人とサポートスタッフの皆さんは、泣くでもなく怒るでもなく、ただとても悔しそうな顔をしていました。しかし、目には力がこもっている、と感じました。
ご家族や見守っていた皆さんはそれを見て、安心したと思います。
成長に大切なものだからです。

アビコさんのインタビューの中で、メンバーがもう次を見据えている、と聞いたとき、次回はきっと、より素晴らしいチャレンジになる、そう確信しました。今回の彼らの挑戦が、私を含め、関わったすべての人にとって刺激になり、新たなハーモニーを奏でるといいな、と感じました。
素晴らしいチャレンジを、ありがとうございました。
いつの日か、スタッフのオリジナルブレンドが、カフェメニューに載ることを楽しみにしています。

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